メールマガジン バックナンバー No.050




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環境・持続可能な社会へのみんなの一歩
                    グリーン・フォワード 
http://www.greenforward.org
No.050  2006/7/29
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《目次》
●01:グリーン・フォワードからのお知らせ
   - メルマガ発行50回
●02:環境関連税の政治経済学 (その3)
●03:日本語にはない?表現
●04:構造改革に必要なもの?

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●01:グリーン・フォワードからのお知らせ

当メルマガも今回で記念すべき50回となりました。(^o^)/
購読者の皆様に厚く御礼申し上げますm(__)m

最近、コーナー02から04の3部構成が定着してきましたが、皆様の感想は
いかがでしょうか?
1回の発行でネタを3つも準備しなければならないので、それなりに大変なので
すが、1つのネタで長文を書くのもクドい気がするので、現在の短文複数掲載
スタイルとしています。

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大きな飛躍を遂げようとしています。

詳しくはwebサイト http://www.greenforward.org/ の会員募集ページ
または、e-mail info@greenforward.org まで

メルマガへの皆様のコメントお待ちしておりますm(__)m

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●02:環境関連税の政治経済学 (その3)

前回に続き、OECDが日本に勧告している環境政策としての経済的手法(税や
課徴金)についてご紹介致します。
(当メルマガ新規購読の方は、バックナンバーにて前々号No.48、前号No.49を
ご一読下さい)

OECDの勧告には、「税の影響を受ける部門や関係者とコミュニケーションを
取り、新しい税に対する受容性を構築すべき」、というものが含まれています。
環境問題の原因と影響についての、正確かつ焦点を絞った情報提供も
欠かすことができない、としています。

では前回の続きで、環境税(炭素税)の導入の際の、特定部門への影響を抑え
る方法として挙げた「税収をその特定産業に再還流させる」というものを見てみま
しょう。

この方法は、炭素税として実現している国はまだありません。
再度、鉄鋼業界を対象としたOECDのケーススタディを見てみましょう。
炭素税として、CO2 1トンあたり25ドルの税を掛けるとします。
同時に鉄鋼業界からの炭素税税収の全額を、鉄鋼メーカー各社に還付します。
還付の額は、そのメーカーの生産量に応じます。
よって、鉄鋼業界全体としては費用増加が無いため、競争力が衰えることも
ありません。
全額還付(再還流)させるならば、何のために課税しているのでしょうか?

業界の中の各社の姿はどうでしょうか?
同じ生産量のA社とB社があったとします。生産量に応じた還付なので
両者とも還付額は同じです。
ここでA社はB社の2倍、エネルギー効率がよいとします。
するとA社の払う炭素税は、B社の半分で済みます。
A社のほうがB社よりトクをすることになります。
繰り返しますが、X国の鉄鋼「産業」の競争力は衰えていません。
全体でのCO2排出は10%の削減(OECD試算)となり、その効果もあります。

環境関連税の一つ、NOx課徴金を導入しているスウェーデンで同じ方法が取られ
ています。
産業界からの反対はそれほど強くないとのことです。
同じ業界内に、トクをする企業(A社)が生まれるわけですから。
しかもA社は「環境によい」という好評価のオマケ付きです。


税収の再還流、なかなか面白い方法だと思います。
環境税(炭素税)への反対派(特に産業界)の反対理由「国際競争力を損なう」は
成立しないことになります。
ただしOECDとしては、この再還流よりも、あくまで国際的に調和のとれた環境
政策、国境税調整のほうを勧めています。
税の再還流はその業界に製品補助金を支給することに等しく、また税の歪みを
生むのに対し、国境税調整のほうがCO2削減効果は大きいためです。(CO2約20%の削減)



3回連続で環境税(炭素税)をOECDの勧告、主に産業界との接点について紹介
してきました。
筆者としては、1日も早く、(うまく制度設計された)炭素税が導入されることを
望んでいますが、その障害となっているものは何かと考えました。
障害の一つは、産業界、エネルギー多消費産業メーカーを抱える経済団体から
の「反対」です。
彼らが「賛成」する炭素税はどのようなものでしょうか?…

また今後も当メルマガで、民生や家計への影響という視点で、炭素税について
ご紹介したいと思います。

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●03:日本語にはない?表現

えー、今回は英語のイディオムを2つ挙げてみます(^^ゞ

・point of no return : 引き返すことのできなくなる地点

気候変動(温暖化)などではよく使われる言葉ですが、日本語にするとイマイチ
すっきりしません。(帰還不能(限界)点、復帰不能(限界)点という表現もあるら
しいですが硬い…)
映画『Back to the Future part3』でも使われていたのが印象的でした。

適切な言葉が無いということは、その概念も表しにくく理解しにくいものとなりま
す。
社会には人為的な問題が多くある中で、気候変動が他の問題と異なる要素の
一つが「システムに内在する『遅れ:delay』」の大きさ、です。
たとえ今日、CO2の排出量がゼロになったとしても、気候変動の影響は、
気温の安定に数百年、海面上昇に数千年間も表れることになります。

将来の危険なレベルを避けるための転換点はずっと先に思えるかも知れません。
が、「地球シミュレーター」による最新の調査結果によると、point of no returnは
2006年だそうです。
って今年じゃん!( ゜Д゜)

・double standard : 二重基準

対象によって、異なる基準を持つことです。
社会問題に多く見られることですが、同じことをやっているA国とB国に対する
評価がまったく異なる。Aさんは良くて、Bさんはダメ?
報道を見ても、double standardだなと思う事例が非常に多く見られます。
持続可能な社会の実現には、公正・公平さというのが重要なコンセプトであると
考えますが、double standardの濫用は、これを損ねているのではないでしょうか。
実際に二重基準を減らすとともに、私たちのメディア・リテラシーを高める必要性
もあると感じます。

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●04:構造改革に必要なもの?

ポスト小泉レースの開始をメディアが報じています。
小泉内閣の言う「構造改革」に対しては、皆様も様々なご意見をお持ちでしょう。

ある本を読んでいて、下記のような一文を見つけました。
「構造改革には、社会保障改革と雇用の柔軟性の達成が必要である。」
なるほど…
どちらも持続可能な社会の実現には不可欠なものです。

この一文が記されていたのは、2000年発行の
『オランダモデル―制度疲労なき成熟社会』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532148219/greenforward-22
です。

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環境・持続可能な社会へのみんなの一歩
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No.050  2006/7/29

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