メールマガジン バックナンバー No.053




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環境・持続可能な社会へのみんなの一歩
                    グリーン・フォワード 
http://www.greenforward.org
No.053  2006/8/20
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《目次》
●01:グリーン・フォワードからのお知らせ
●02:「Out of sight, out of mind」
●03:鉱物資源の場合
●04:ダッチ・アプローチ

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●01:グリーン・フォワードからのお知らせ

原稿は昨日の時点でほとんど書きあがっていたのですが、暑さに負けて
発行は今日に延びてしまいました…

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●02:「Out of sight, out of mind」

以前、当メルマガで、日本語にはぴったり来る言葉が見当たらない表現を
紹介しましたが、もう一つ重要なイディオムを紹介させてください。

それは、「Out of sight, out of mind」です。
ことわざの「去るもの日々に疎し」の訳が当てはまる場合もあるでしょうが、
もっと広い意味で使われているように思います。

直訳ですが、「目に入らないものは、関心の外」として以下、進めて行きましょう。

「目に入らないもの」とは、どんなものがあるでしょうか。
遠く離れた国/地域での出来事、将来の出来事、過去のこと、専門的すぎること、
自分とのつながりが見えないもの、など実に多くのことが当てはまります。
残念ながら、環境問題や社会問題の多くがこれに該当するように思えます。
よって、「Out of sight, out of mind」は、今後も何度か当メルマガで使うと思い
ますので、ご了承ください。

「Out of sight, out of mind」は日本語になじみのない言葉ですが、最近、この
対極に位置するものでよい言葉が広まりつつあります。
それは、「見える化」です。

環境教育や開発教育、普及啓発活動、キャンペーンなどは、社会における問題
の「見える化」の一部を担っていると言えます。
が、企業で行われている「見える化」に比べると、まだまだと言えます。
「見える化」については、またいずれご紹介したいと思います。

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●03:「Out of sight, out of mind」 鉱物資源の場合

「Out of sight, out of mind」の第1回目は、鉱物資源を取り上げたいと
思います。

いわゆる「原材料」は全般的に、わたしたち消費者から遠く、分かりにくいもので
すが、特に鉱物資源は、見えにくいものです。
この理由はいくつか考えられますが、
・実際に鉱山が遠い海外にある。
・日本企業が鉱業のメジャープレーヤーではない。
・鉱物そのものを目にすることが少ない。
などが挙げられます。

では、鉱山開発・操業でどのような問題があるのでしょうか。
まず、環境面。
鉱業で最も特徴的なものが、大量のズリ(waste rock)、テーリング(tailing:
尾鉱) (どちらも、有用ではない鉱石)の発生です。
鉱物によっては、有害化学物質(金(gold)の場合、シアン化合物)を使ったり
また重金属も流出します。
これらはすべて河川や海洋の汚染原因となります。
地域住民の健康被害も招いています。
森林伐採も含め、生態系破壊の原因となります。

このズリやテーリングの発生量が半端じゃありません。
一つの鉱山だけで、1日で30万トンとか、年間では4000万トンにも上ります。(*1)

例えば、金鉱山では年間30.6億トンが掘削されます。(全世界:2002年)(*1)
そのうち、金の地金となるのは、2,249トンです。(*1)
有効なのは0.00007%だけです。
99.99993%は捨てられてしまいます。
金が特殊な例でしょうか?
銅の場合、256億トン掘削し、地金となるのは1535万トンです。(*1)
有効なのは0.06%であり、99.94%は捨てられます。
ま、約1000倍ほど効率はよいようですが、ほとんど捨てられていることに変わりは
ありません。
他の鉱物も同様に、掘り出したもののほとんどはテーリングとして、河や海を
まっ茶色に汚していきます。

次に社会面の影響を見てみましょう。
先住民の権利が損なわれることが多いのは、鉱業だけの話ではありませんが、
ダイヤモンドなど特に高価な鉱物の場合、紛争や内戦、大きな人権侵害の
原因となっています。
(長くなるのでこれはまたいずれ)

現代社会において、銅や金などの金属、鉱物資源を使わずに生活することは
できません。
今お使いのパソコンにも、携帯電話にも。
銅の場合、電線、プリント基板、モーター、熱交換器など、大量に使われています。

では、私たちはどうすればよいのでしょうか?
これを持続可能なものにすることはできるのでしょうか?
次回、この続きを考えてみたいと思います。

注:(*1)の部分の数字は、地球・人間環境フォーラム主催の「持続可能な
  原材料調達」セミナーの谷口氏の資料からの引用です。

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●04:ダッチ・アプローチ

また久しぶりにオランダネタです(^^ゞ

ダッチアプローチ(Dutch appoach)という言葉があります。
(念のため、Dutchは「オランダの」という形容詞です)
これは、オランダで行われている合意形成のための手法です。

政策を作る過程で、政府・企業・NGO が対等な三角形をつくりあげ、三者が対等
な立場で話し合い、議論を経て合意形成をしつつ社会を動かしていく、というシス
テムだそうです。
多様な意見を取り入れて、それらを統合して考えるという発想に基づいています。
この方法では合意に至るまでには、非常に長い時間がかかることが予想されま
すが、一旦合意を得れば、その後はそれに従って行動すればよいため、効率的
であると言えるそうです。

法令の導入による強制的な適用措置によらず、政府と企業とが話し合って協定
を締結し、企業のイニシアティブで実施していく方式、とも言えます。

この中身だけを見れば、特に珍しいものでもなく、「ダッチ」の名前も必要ない
ような気もしますが…

なぜ「合意形成」か…という話は、『オランダモデル―制度疲労なき成熟社会』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532148219/greenforward-22
をご覧下さい。
これを読むと、なるほど、これは表面的な手法の話ではなく、価値観なのだと
いうことが分かります。

規制に頼らず、企業のイニシアティブで実施…。
日本にも向いている手法のような気もしますが、最初の出発点である「対等な
三角形」を作るための「NGO」という要素が大きく欠けているので、困難かもしれ
ません。

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