メールマガジン バックナンバー No.068





==================================================================

環境・持続可能な社会へのみんなの一歩
                    グリーン・フォワード 
http://www.greenforward.org
No.068  2007/7/14
==================================================================
《目次》
●01: グリーン・フォワードからのお知らせ
●02: 1人1日1kg削減?
●03: ポスト○○ 〜 京都議定書に関する誤解シリーズ 〜
●04: 教材作成プロジェクト始動!

------------------------------------------------------------------

●01: グリーン・フォワードからのお知らせ

いやー、前回のメルマガ発行は5/13だったのですね…
自分自身驚きました。(+_+)
メルマガ発行を2ヶ月も空けてしまいました。
読者の皆様にはお詫びいたします。m(__)m

6月の環境月間行事の様子をwebにアップしております。
よろしければご覧下さい。

ちなみに、グリーン・フォワードのホームページのカウンターが
間もなく(ようやく)10,000になりそうです。


……………………………………………………………………………

<グリーン・フォワードのサポーターになって頂けませんか?>
グリーン・フォワードは小さなNPOですが、新しい環境学習教材の開発により、
大きな飛躍を遂げようとしています。

詳しくはwebサイト http://www.greenforward.org/ の会員募集ページ
または、e-mail info@greenforward.org まで

メルマガへの皆様のコメントお待ちしておりますm(__)m

----------------------------------------------------------

●02: 1人1日1kg削減?

前々号No.066、前号No.067と日本の温室効果ガス排出状況や
京都議定書関連についてご紹介してきましたので、今回もそれに関する
話題をご紹介いたします。

メルマガ発行が滞ったのでやや古いネタとなってしまいましたが、
5月24日に安部首相が、美しい星へのいざない「Invitation to 『 Cool Earth
 50 』」という演説を行いましたね。
http://www.kantei.go.jp/jp/abespeech/2007/05/24speech.html

その中で出てきた提案の一つ(提案3)が、国民運動「1人1日1kg」の
温室効果ガスの削減、です。
ライフスタイルの見直しや、家庭と職場での努力や工夫を呼びかけるそうです。

また精神論と掛け声(だけ)ですか…
一人ひとりの気付きや意識は大事なので、それ自体を否定するわけでは
ありませんが、提案1は2050年の長期戦略、提案2は中期戦略なので、
現時点実行可能な施策は、この提案3の国民運動の呼び掛けだけ、ということ
になってしまいます。

「1人1日1kg CO2削減運動」の中身を示すため、参考資料が配布されて
います。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/ondanka/2007/0524inv/siryou6.pdf

演説では、「温室効果ガス」の削減、と言っているのですが、資料では「CO2」
の削減、とすり替わっています。
まぁ、家庭からの排出の大半はCO2なので、分かりやすさを優先したのでしょう。
また、演説ではオフィスや家庭、と言っていますが、資料は家庭部門を中心と
した説明となっています。(右下に小さく「業務部門も」と書いてありますが)

1kg×1億2,800万人×365日=4,700万トン/年

なかなか大きな量です。
ご参考までに、京都議定書達成計画の目玉である、経団連自主行動計画の
削減目標は4,240 万トンなので、それを 上回る 削減を家庭部門で実現しようと
しているわけです。

ちなみに、部門別に見れば「産業」が最大の排出源であることはご存知だと
思いますが、「産業+エネルギー転換(発電)」の総排出量は534百万トンで
全体の約44%を占めており、家庭は174百万トンで約14%を占めています。
(エネルギー起源CO2:2005年度)

まぁ、どちらも「自主的な」取り組みなので、どちらの削減目標が大きい小さい
を言っても始まらないのですが…

1日1kgの削減はなかなか大変です。
我が家のようなエコ家族では、もうこれ以上の削減は難しいと思います。

家庭部門の基準年(1990年)の排出量は127百万トンであり、それが174百万トン
まで増えている(+4,700万トン)ので、これを減らすことは全体としてはそれほど
理不尽な要求ではないとは思います。

一人ひとりが削減していく、という理念は立派ですし、必要なことなので
これ自体を批判する人もあまりおらず、批判があったとしてもそれは、
具体的な施策が無いという点に向けられているように思います。

が、筆者には一つどうしても気になる点がありました。
それは広報の仕方です。
(えー、ようやく本題に入りました)
筆者は6月1日の日経新聞朝刊に出ていた一面広告を見たのですが、他紙でも
同じ広告があったことと推測します。
(6月1日の新聞をお持ちの方は、ご覧になって下さい)

それは、地球温暖化対策本部による広告で、
「1人、1日、1kgのCO2を減らそう。」と呼びかけていますが、
それよりもずっとずっと大きな字で紙面の半分ほどを使って、
「あなたが出しているCO2は、あなたしか減らせない。」と強調しています。

えっ?なんですって?!

私の出しているCO2は、私しか減らせない?

ワタシでなくても、ワタシのCO2は減らせますけど…

当メルマガの以前からの読者の皆様にはお分かりのとおり、
例えば発電の源を化石燃料ではなく、風力などの再生可能エネルギーに
変えた場合、私たちは何もしなくてもCO2排出を減らしたことになります。
(何も努力しなくてよい、と言っているわけではありません)
逆に、知らないうちに石炭発電が増えた場合、(バックナンバーNo.052参照)
同じ電力量を使っていても、知らないうちに、CO2排出を増やしていることに
なります。

街づくりや公共交通にも同じことが言えるでしょう。
都市計画や国土計画こそが、移動ニーズの量と質を決めるものであり、
利便性と快適性を保ちながら、自動車依存度を減らすことが可能です。

住宅の質も同様でしょう。
高断熱、好換気の住宅が提供されるならば、無理に我慢せずとも
冷暖房を自然に減らすことが出来て、快適で健康な生活が送れるのでは
ないでしょうか。

レジ袋が禁止されれば、誰もがマイバッグを使うようになります。
これらはすべて諸外国では実現されていることなのです。

挙げればキリがありません。
私(あなた)の出すCO2は、私(あなた)以外の条件によって、増えることも
減ることもある、ということがご理解頂けたことと思います。

石炭火力発電がどんどん増えている、
季節はずれの食べ物が遠くから運ばれてくる、
地方鉄道が廃止され、バス路線もどんどん廃止されている、
このような状況の中で、個人の努力を求めるのは無茶なことではないでしょうか。

「あなたが出しているCO2は、あなたしか減らせない。」
この文面が不適切なものであることは繰り返すまでもありません。
その後、新聞などでもこの広告を見たことがないのですが、もしどこか
ネット上でこの広告文が見られるサイトがあれば教えて頂ければ幸いです。

もう一つ、蛇足ですが、「国民運動」という呼び名も気になります。
すべての主体、とか、市民、とか呼ぶなら問題はありませんが、
「国民」には限定的な響きがあり、実際、日本には「国民」に含まれない
多くの方々が暮らしていらっしゃいます。


------------------------------------------------------------

●03: ポスト○○ 〜 京都議定書に関する誤解シリーズ 〜

また今回も、京都議定書に関するよくある誤解を書いてみましょう。

最近、マスコミでよく見聞きする表現の一つに「ポスト京都議定書」という
言葉があります。

京都議定書には、中国やインドなどの途上国が加わっておらず、先進国
(特に日本)にとっては不公平だ、だから新しい枠組みを作ろう、という
ネガティブなトーンの場合と、2013年以降も途切れずに国際的な約束を
作ろうというポジティブなトーンの場合の両方において「ポスト京都議定書」と
いう言葉を見聞きします。

京都議定書という言葉の認知度が上がることは悪くはないと思うのですが…

恐らく、「ポスト京都議定書」という表現を使う人(メディアも含む)は、
京都議定書は2012年で終わる、という誤解をしているから、ポストという言葉
を加えているのではないでしょうか?

京都議定書の第一約束期間は2008年から始まり、確かに2012年に終わります。
が、終わるのは第一約束期間であって、京都議定書そのものが終わるわけでは
ありません。
つまり、これ以降の時期のことを指すならば、例えば「ポスト2012」とか、
「次期約束期間」と呼ぶほうが適切ではないでしょうか。
「ポスト京都議定書」という呼び方は誤りです。
少なくともメディアはこの呼称は使うべきではなく、訂正すべきと考えます。

実際、欧州のメディアでは正確に表現されることが多いようです。
日本であまり多くの「ポスト」という表現を見るとき、日本の京都議定書反対派
の人々が、京都議定書は終わるんだ、仕切り直しができるんだ、と思い込もう、
思い込ませよう、としているのではないか?と勘繰ってしまいます。

現在、ポスト2012として議論されているのは、附属書Bに掲げられた削減量の
見直しと、附属書I 締約国以外の国々をどのように取り込むか、という点です。

ちなみに、これもよくある誤解ですが、中国もインドも京都議定書は批准して
います。
ただ、削減義務を負う附属書I 国には含まれていない、というだけです。


----------------------------------------------------------

●04: 教材作成プロジェクト始動!

始動!ってほど大げさなものではありませんが、ようやく再び教材(ワークショップ
プログラム)を作成することにしました。
第一作目は、一応昨年(06年)9月に作成したので(公開は07年1月)、今回が
第二作目ということになります。

教材(ワークショッププログラム)のテーマ設定をどうするか、これだけで
数時間議論したように思います。

グリーン・フォワードの基本方針として、ESDとして、環境と開発など複数の
視点やつながりを考えるもの、という点を押さえることは確かなのですが、
具体的に何をテーマとするか決めるのは結構難しい…

結論として、やはり地球温暖化、気候変動は緊急かつ最大級のテーマであり、
これに南北格差や途上国の開発問題、人権などを絡めたワークショップを
作ろう!ということになりました。
まだ具体的な作業はこれからです。
なかなか手ごわいテーマです。
以前から意識はしていたのですが、あまりに大きなテーマであり、なかなか
踏ん切りがつかない状態がずっと続いていました。

というわけで、テーマのみが決まっている状況ですが、面白そう、ワークショップ
教材を作ってみたいと関心をお持ちの方、一緒に作ってみませんか?(^^)

特に何も義務的なものはありません。
興味のある方は、お気軽にご連絡下さい。
あなたのお気軽な、しかし価値のある一歩をお待ちしております。


==================================================================

環境・持続可能な社会へのみんなの一歩
                    グリーン・フォワード 
http://www.greenforward.org
No.068  2007/7/14

ご意見、ご感想、情報の提供は info@greenforward.org まで
==================================================================