メールマガジン バックナンバー No.069





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環境・持続可能な社会へのみんなの一歩
                    グリーン・フォワード 
http://www.greenforward.org
No.069  2007/9/17
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《目次》
●01: グリーン・フォワードからのお知らせ
●02: 持続可能な漁業

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●01: グリーン・フォワードからのお知らせ

またメルマガ発行を2ヶ月も空けてしまいました。
もう連休とかまとまった時間が取れるときでないと、発行は難しいかも
しれません…

今後のグリーン・フォワードの活動予定をご紹介します。

1.練馬区 「環境・リサイクルフェア」
  毎年恒例の行事ですが、今年は10月21日(日)の開催です。
  グリーン・フォワードは、これまた例年と同じく、環境ゲーム会
  「森林バイオマスすごろく」を実施予定です。

2.「ライフスタイルフォーラム2007」 http://www.lifestyle-forum.org/
  部分的な出展協力は過去に実施したことがありますが、単独出展は
  初めてとなります。
  11月3日(土)と4日(日)に、新宿御苑で開催です。
  グリーン・フォワードはミニワークショップを実施予定です。
  テーマは温暖化と開発問題とする予定です。

どちらもお気軽に遊びに来てください(^o^)/
もしくは、ボランティアご協力頂ける方を募集中!

……………………………………………………………………………

<グリーン・フォワードのサポーターになって頂けませんか?>
グリーン・フォワードは小さなNPOですが、新しい環境学習教材の開発により、
大きな飛躍を遂げようとしています。

詳しくはwebサイト http://www.greenforward.org/ の会員募集ページ
または、e-mail info@greenforward.org まで

メルマガへの皆様のコメントお待ちしておりますm(__)m

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●02: 持続可能な漁業

持続可能な資源管理とその手法は、グリーン・フォワードの中心的な問題意識
の一つです。
広義の環境教育は、個人レベル・社会レベル共に、それ(持続可能な資源管
理)について学び、考え、行動することを目的としている、と思います。

今回、NHKの「クローズアップ現代」で7月23日に放送された、
http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku2007/0707-4.html 
「魚が消える? 環境にやさしい漁業をめざせ」の内容をご紹介しながら、
持続可能な漁業について考えてみたいと思います。

クロマグロやマサバなどの漁獲量減少はよくメディアに取り上げられていますが、
なかでも減少著しいのが、代表的大衆魚であったマイワシです。
その資源量はピーク時の1980年代後半には約2000万トンと推定されていまし
たが、現在はその1%未満と推定されています。

この原因は諸説あるようで、必ずしも乱獲だけが原因ではないようですが、
結果から見れば、漁場は崩壊したのであり、生態系のバランスは大きく崩れ、
マイワシ漁に携わっていた人々の生活は変化し、私たちの食生活も変化
しました。

番組では、ヨーロッパウナギの激減の例が取り上げられ、ワシントン条約で
輸出入の規制対象となったことが紹介されました。
日本で食されているウナギの多くは、ヨーロッパウナギの稚魚を中国などで
養殖したものであるため、来年以降、出荷量や価格に大きな影響が現れる
ものと予想されます。

一方、ワシントン条約のような規制的手法ではなく、自主的な情報的手法で
あるラベリング制度による取り組みも紹介されました。

1997年に開始された、海のエコラベルと呼ばれるMSC(海洋管理協議会)
です。
世界では年間400万トンがMSCの認証を受けており、これは食用天然漁獲量
の7%にも上る数字だそうです。
欧米の一部のスーパーでは、天然水産物のすべてをMSC認証品に切り替える
ことを発表しています。
日本では去年の秋からようやく市場化されたこともとあり、まだその量はわずか
なものです。

  MSCに関して:
  http://www.wwf.or.jp/activity/marine/sus-use/msc/index.htm
  http://www.msc.org/jp/


番組では、ノルウェーの漁業についても紹介されていました。

ノルウェーでは、日本と同じく漁業が重要な産業の一つです。
その魚の資源量を見ると、
 1985年  600万トン弱
 2005年  1500万トン
と、20年で2倍以上に増えています。

これは一体なぜなのでしょうか?
漁獲される魚の年齢を見ると興味深いことが分かります。

漁獲されたサバの年齢構成を見ると、ノルウェーでは、
3歳以下 14%
4歳    30%
5歳    21%
6歳    35%  
(グラフから目測で読んでいるので不正確な数字であることをご容赦下さい)

一方、日本で獲られるサバの年齢は、
0歳    52%
1歳    34%
2歳    14%
となっています。
(こちらもグラフ目測のため不正確な数字であることをご容赦下さい)

ノルウェーで獲られるサバは年齢が高く、日本では若いサバが獲られている
ことが一目で分かります。

なぜこうなっているのでしょうか?

それは、規制の手法が異なるからです。そして、規制の考え方が全く異なる
からです。

日本では「総量規制」があります。一定の解禁期間に複数の漁船が一斉に
漁を始めます。各船の漁獲合計量が上限に達するとそれ以降は禁漁となります。
ダービー方式(オリンピック方式)と呼ぶそうです。

一方ノルウェーでは、総量を分割して各漁船に割り当てた「割り当て制度」が
導入されています。
同じように漁の解禁期間は決まっています。
個別割当(IQ)制度と呼ぶそうです。

この2つの制度の違いはどのように現れるでしょうか。

日本の場合、一斉にヨーイドンで他船より多く獲ったほうが有利、つまり、
早い者勝ちです。いつ上限総量に達するか分からないので、一日でも早く
漁獲高を増やすことを重視せざるをえず、小さい魚まで取り尽くしてしまいます。
皆が一斉にスタートダッシュで水揚げ量を競うため、漁のスタート早々に、
再び禁漁となってしまいます。

ノルウェーの割り当て制度では、各漁船ごとの漁獲可能重量はあらかじめ
決まっています。同じ重量の魚を獲ってよいとすれば、あなたならばどうする
でしょうか?
そうです、高く売れる、なるべく大きな魚を獲ろうとするでしょう。
実際にノルウェーでは、解禁期間を一杯に使い、計画的に漁をしているそうです。
安い小さな魚は避け、年齢の高い、大きな魚を狙っているのです。

大きなサバは脂が乗っているため単価が高いことは言うまでもありません。
比較すると、
 ノルウェー産 278円/kg(輸入単価)
 国産       62円/kg(産地価格)
となっています。
もし同じ10トンの水揚げがあったとすると、ノルウェーの漁師は278万円の
売上を得られるのに対し、日本の漁師は62万円しか得られません。
4倍以上の差です。 ノルウェーの経済的なメリットは大きいですね。

ノルウェーの漁師は儲けようとすれば、より少ない数のサバ(大きく年齢の高い
サバ)を獲ろうとします。
生き残った若いサバは、5〜6年後に獲られるまで、何回も産卵の機会がある
ために、個体数の増加につながります。
ノルウェーでは、漁業者同士の無駄な競争をする必要が無く、日本では
早い者勝ちの過剰競争。
日本では、0歳魚までをも根こそぎ獲ることによって、なんとかその年の水揚げ
は確保していますが、果たして来年は同じように漁ができるでしょうか?
いいえ、漁業者自身も否定的です。
でも、今年獲らないと生活できないので、根こそぎ獲ってしまう…
なんとも悲しい悪循環です。
誰にとっても持続可能ではありません。
魚にとっても、漁業者にとっても、消費者にとっても、漁業関連産業にとっても…

単純に、もしあなたが漁業をするならば、日本とノルウェーのどちらが
よいでしょうか?
将来にも魚類が絶滅することなく、種が維持できそうなのは、どちらでしょうか。

漁業者の努力は、日本もノルウェーも同じでしょう。いえ、早い者勝ちの
過酷な競争がある分、日本の漁業者の努力のほうが大きいかもしれません。

ほんのわずかな制度の違いが、多方面にわたって大きな結果の違いを
もたらす。
このような事例は漁業に限らず、多くの分野で見られることだと思います。

持続可能な○○、というのは、環境や生物にとってのみメリットがあるわけでは
ありません。
それは、私たち消費者や、その産業従事者にとって、また国の競争力から
見ても、メリットの大きなものなのです。

非再生可能資源の有効利用はもちろんのこと、再生可能資源であるバイオマス
(魚などの生物資源)に対しては、その再生可能範囲を超えないように、
慎重な利用が求められます。
そのためには仲間同士の小さなルールが役を果たす場合もあるでしょうし、
法規制や、国際的な条約が必要なこともあるでしょう。

それほど難しいことではありません。
大抵の場合、ルールはすでにどこかにお手本となるものがあるものです。
人類共通の知恵は、積極的に活用していきましょう。
多くの課題分野で、私たちに残された時間はあまり無いのですから…

新しいルールには抵抗を感じる場合もあるでしょうが、それが決定的に
重要な役割を果たすことがあることも学ぶ必要があるでしょう。


ちなみに、個別割当(IQ)制度を導入しているのはノルウェーだけではなく、
世界で広く使われていますが、当メルマガでは、NHK番組からの引用と
表現のしやすさから、「個別割当(IQ)制度国」ではなく、「ノルウェー」と表現
しました。

個別割当(IQ)制度にも幾つか問題はあるので、さらに進んだ「ITQ(譲渡可能
個別割り当て)方式」という制度が検討(幾つかの国では導入済み)されて
いるそうです。

参考資料:

http://kaiseki.ori.u-tokyo.ac.jp/~katukawa/blog/2007/07/
番組に出演されていた勝川俊雄氏のblog

http://d.hatena.ne.jp/hymatsuda/20070724/1185235287
番組スタジオゲストの松田裕之氏のblog

http://www.jfa.maff.go.jp/gate/noruwe.pdf
水産庁資料 「ノルウェーの漁業と漁業政策」


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今回は長くなったので、これ1本だけとします。


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