メールマガジン バックナンバー No.074





 
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環境・持続可能な社会へのみんなの一歩
                    グリーン・フォワード 
http://www.greenforward.org
No.074  2009/5/14
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《目次》
●01: グリーン・フォワードからのお知らせ
      練馬区の環境月間行事に出展予定

●02: 日本の中期目標

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●01: グリーン・フォワードからのお知らせ

6月は環境月間。
今年も、練馬区の環境月間行事に出展予定です。
行事の日程は、6月20日(土)、6月21日(日)の2日間ですが、
グリーン・フォワードは(今のところ)21日に出展の予定です。

今年は、簡単なクイズ形式をとった、ミニ環境講座、というようなもの
を予定しています。
テーマは地球温暖化です。

皆様のご参加お待ちしております。(^o^)/
また、ボランティアご協力頂ける方も募集中です。

なお、練馬区の行事全体としては、今年は、
6月の13日、14日、20日、21日、27日、28日の土日にも
他会場も含め、開催されます。


メルマガ発行が大幅に滞って申し訳ありません。
右足首の怪我はまだ治らず、痛みとリハビリに要する時間と
闘っております…
もう1年7ヶ月ぐらい経つんですけどね・・・

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大きな飛躍を遂げようとしています。

詳しくはwebサイト http://www.greenforward.org/ の会員募集ページ
または、e-mail info@greenforward.org まで

メルマガへの皆様のコメントお待ちしておりますm(__)m

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●02: 日本の中期目標

当メルマガ読者の多くはご存知だと思いますが、
現在、日本の温暖化対策の中期目標がパブコメに掛けられています。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tikyuu/kaisai/dai07kankyo/tyuuki_iken_syousai.pdf

資料はこのPDFの一番下にリンクが貼られています。

「別紙2 地球温暖化対策の中期目標について(パワーポイント資料)」
というものが分かりやすくまとまっていますので、ぜひ一読して頂きたいと
思うのですが、これを読んだだけでは、誤解が生じるかもしれません。

中期目標は6つの選択肢が上げられています。
その目標値と略称は以下のようなものです。

(1) 1990年比+4% 努力継続ケース
(3) 1990年比▲7% 最大導入ケース
(5) 1990年比▲15% ▲15%ケース
(6) 1990年比▲25% ▲25%ケース

(▲はマイナスの記号)
(また、メルマガでは○数字が使えないので、(1)と表しています)

以下の2つは視点が異なるので別に書きました。
限界削減費用という、追加的に1トン削減するときに要する
費用の比較を行っています。
研究機関により試算値が異なるので、削減目標にも幅があります。

(2) 1990年比+1%〜▲5%
 先進国全体1990年比▲25%限界削減費用均等
(4) 1990年比▲8%〜▲17%
 先進国全体1990年比▲25%GDP当たり対策費用均等

まず誤解してはならないのは、この議論ではあくまで、
いわゆる「真水」部分の目標値を検討している、ということです。
森林吸収や京都メカニズム(CDMなど)の利用は含まれていません。

京都議定書第一約束期間の日本の目標はマイナス6%ですが、
これには、森林吸収でマイナス3.8%、京都メカニズムでマイナス1.6%が
含まれているので、真水の目標値はわずかマイナス0.6%にすぎません。

この「マイナス0.6%」との比較で、中期目標の数値をご覧下さい。

これらの6ケースを中期削減目標値(なかには+という増加目標値もありますが)
とした場合に、どのような対策・政策が必要になるのか、というものも資料で
示されています。

また、「経済への影響の分析」も非常に注目されており、
特に 「(2)分析結果」では、2020年時点における実質GDPの変化や失業率の変化が
分析試算されているので、このページの数値について議論される
(新聞などでも取り上げられる)ことが多いようです。

この「経済への影響の分析 ((2)分析結果)」ページから数字を
取り上げてみると、最も厳しい削減目標であるケース(6)の場合、
例えばGDPは「2020年時点で▲3.2%(押下げ)」となっています。
ほかのケース(3)やケース(5)でもマイナスとなっているので、
このページをちらっとだけ見た人ならば、経済マイナス成長なんて嫌だ、
仕方ないから最も緩い目標値であるケース(1)でいいか…と思ってしまうかもしれません。

でもちょっと待って下さい。

経済への影響の分析のために、「モデル分析」というものが
行われています。
モデル分析を行うためには、その前提として様々なマクロフレームを
固定してあります。

例えばその一つとして、実質GDP成長率を2006〜2020年の平均で
年約1.3%程度としています。これは現在比で2020年には20%のGDP成長と
なるそうです。
つまり先ほどのケース(6)では、基準ケース(1)の20%から3.2%押し下げられて
16.8%成長になりますよ、という意味なのです。
これが大したことはないとは決して言いませんが、経済マイナス成長とは
随分、受ける印象が異なります。
温暖化進行の真のコスト・リスクと比較すれば、どちらが大きいでしょうか?
スターン・レビューでは、対策を取るコストは、対策を取らずにのちのち被る
ことになるコストよりもずっと小さい、という結果が得られています。

また、モデル前提となるマクロフレームには他にも、
・粗鋼生産量 120 百万トン (2020年)
というものがあります。
これは2005年の生産量が113 百万トンであることを考えれば、現状より増産を
前提としています。
また、
・輸送量:旅客 2005年度と同じ (2020年)
      貨物 2005年比約10%増 (2020年)
という前提もあります。

これから低炭素社会を目指すというのに、現状維持もしくは増加を前提というのは
いかがなものかと・・・

これらを固定条件として計算するモデル分析というのは
おのずと狭い結果しか得られないと思われます。

また、モデル分析の宿命として、過去のトレンドを引きずってしまう、という
ものがあります。
過去の一時点からスタートして、「現在」が正しく導かれなければ妥当なモデルとは
みなされないので。
つまり、モデル分析で得られる「未来」は、あくまで過去の延長でしかない、
ということをあらかじめ理解しておく必要があります。
(モデル分析が悪いという意味ではありません)
これから社会を低炭素に向けて積極的に大きく変革していかなければならない、
という現在においては、過去に捕われることのない発想と行動が必要なことは
言うまでもありません。

また、残念ながら今回の中期目標検討では、そもそもドラスティックな変化は
考慮していないとのことです。
(だからモデルもそのような前提となっている、と)
ドラスティックな変化については、長期目標で検討していく、ということに
なっているそうです。
普通に考えれば、(口で言うほど簡単な作業ではないと承知しながらも、)
中期・長期の両面をにらんで検討・実施していくべきと思うのですが・・・

2005年の世界全体でのCO2排出量は約266億トン。(二酸化炭素トン表記)
これが2050年には、成り行きシナリオでは2倍の500億トンを超えてしまいそうです。

自然の吸収量は約113億トンなので、長期的には現状の半分以下に
する必要があること、また自然からの排出増加トレンドを抑制するには、
短期的・中期的には半分以下よりももっと大きな削減が必要であることを
忘れてはならないと思います。

削減する量が大事なのは言うまでもありませんが、削減するスピード、
つまり早期に減らすことも同じく大事であり、早く・深く・削減するために
あらゆる手段を講じる必要があります。

なお当メルマガでは、メルマガ長文化を避けることもあり、
1990年比での目標値だけを記述しました。
政府資料には、2005年比も併記されています。

繰り返しになりますが、今、この中期目標のパブコメが
実施されています。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tikyuu/kaisai/dai07kankyo/tyuuki_iken_syousai.pdf
5月16日までなのですが、ぜひ皆さんもご意見を提出してみてはいかがでしょうか。


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No.074  2009/5/14

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